ハーバードでMBAを取った人間の多くが、ベンチャーに挑戦するのも、いつでも1000万以上稼げる仕事に帰れるという安心感があるからでしょう。グーグルの創業者2人にも、「起業に失敗しても、またスタンフォードに帰って研究すればいいや」という余裕があったわけです。人間は、人生の最低ラインが見えた方が、大きなリスクに挑戦することができるのでしょう。
以前、上場に成功したベンチャー企業の社長が、「日本での起業は、あまりにも精神的なプレッシャーが大きすぎて、経営者が冷静な経営判断を下せなくなってしまう」としみじみと語っていたことを思い出します。危機のとき必要なのは、火事場のくそ力よりも、むしろ冷静な判断力。「失敗したら自己破産」という危機感よりも、「失敗しても年収1000万」という安心感の方が、経営者の正しい判断を促すのでしょう。
逆説的ですが、「やりたいことをやれ」という勇ましいアドバイスより、「足元を固めろ」という現実的なアドバイスの方が、結果として、リスクに挑戦する人間を増やすことになるのかもしれません。