2011年7月26日火曜日

ドル下落、米債務問題の交渉難航続く-一時4カ月ぶり77円90銭

  7月26日(ブルームバーグ):午前の東京外国為替市場では、ドル・円相場が一時1ドル=77円90銭と、円が戦後の最高値を付けた3月17日以来の水準までドル安が進んだ。米国の債務上限引き上げ問題について、オバマ大統領が演説したが、民主・共和両党の溝が埋まっていないことを改めて示す結果となり、失望感からドル売りが活発化した。
  ドル・円相場は4カ月ぶりのドル安値から78円70銭まで急速に値を戻す場面も見られたが、その後はすぐに78円台前半に押し戻されており、午後零時20分現在は78円09銭付近で取引されている。複数の市場関係者によると、円の急落局面では、政府・日本銀行による為替介入の痕跡は見当たらなかったという。
  クレディ・アグリコル銀行外国為替部の斎藤裕司ディレクターは、円急落の動きについて、「まとまったドル買いが入った後、ストップを付けに行くような動きになったようだ」として、ストップロスを巻き込んで円の下落が加速したとの見方を示した。
  オバマ大統領は米ワシントン時間25日午後9時(日本時間26日午前10時)に債務上限引き上げ交渉の状況を説明するため、ホワイトハウスで国民向けに演説。「現在のように債務が増加し続ければ、雇用が失われ、経済に深刻な損害を与えかねない」と語り、「均衡の取れた」アプローチで合意に達するよう議員らに呼び掛けた。大統領はさらに現在の手詰まり状態は、増税なしの予算削減を主張する下院共和党の一部議員にあると批判した。
  みずほ証券の林秀毅グローバルエコノミストは、債務上限の引き上げをめぐる民主党と共和党の交渉が「予想以上にこじれている」といった状況下で、オバマ大統領が演説するということで、市場には前進を示す内容への期待感があったと指摘。しかし、演説内容には特に両党の妥協点はうかがえず、「米国のデフォルト(債務不履行)が現実のものとして意識されるようになった」として、ドル売りにつながったと説明している。
  ドルは対ユーロでも売り進まれており、一時は1ユーロ=1.4487ドルと、今月5日以来の安値を付けている。
           民主・共和党の対立浮き彫り
  大統領演説を受けて、米共和党のベイナー下院議長は、債務上限引き上げ問題の解決に向けて大統領と「真剣な努力」を続けてきたと述べた上で、大統領が同問題で「危機感」を煽ったと指摘。また、「大統領は6カ月前に白紙小切手を求め、今日も白紙小切手を望んでいる。こうしたことにはならない」と訴えた。
  市場では8月2日までに両党の合意が引き出せない場合は、デフォルトに陥る可能性が警戒されており、信用格付けの引き下げなどの弊害も生じかねないとみられているが、一段と対立の構造が浮き彫りになる状況となっている。
  一方、円高圧力が強まる中、野田佳彦財務相は閣議後会見で、「極めて対外的な要因で一方的な動きになっている。しっかりと市場の動向を注視していきたい」と述べた。
  また、海江田万里経済産業相も会見で、円高傾向が続いていることについて、深い憂慮を持って見守っていると述べた。そのうえで、状況が克服されるよう政府としても努力すべきだと強調。協調介入については、財務相が日銀と相談して適切に判断されると語った。
  みずほ証の林氏は、週初から日本の当局者が円高局面で「口先介入」を繰り返していたにも関わらず、77円台に突っ込んでしまったということで、「実際に介入ができるかどうかが問われることになる」と指摘。いったんはドルが「反発するのは自然な動き」だとしている。

取材協力:小宮弘子 --Editor:Joji Mochida, HidenoriYamanaka
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