2011年8月10日水曜日

<地震>「首都直下」高まる危機 東日本大震災で地殻変動

(毎日新聞 - 08月10日 11:10)

 東日本大震災の発生から明日で5カ月。マグニチュード(M)9.0の巨大地震は東日本の地殻にかかる力を変え、首都圏を含む一部の地域や活断層で地震を起こしやすい状態が続いている。専門家が懸念するのは、阪神大震災(M7.3)以上の被害が想定される首都直下地震への影響だ。発生の可能性はどの程度高まっているのか。【八田浩輔、比嘉洋】

 中央防災会議は、東京近郊を震源とする首都直下地震について、M7級の18の地震を想定している。なかでも東京湾北部地震(M7.3)では、最悪のケースで死者1万1000人、全壊全焼の建物は85万棟と想定。関東大震災(1923年、M7.9)のようなM8級の地震より規模は小さいが、大きな被害が懸念されている。

 大震災後、特に注目されているのが「立川断層帯」(埼玉県飯能市~東京都府中市)だ。政府の地震調査委員会は7月までに、国内106の主要活断層のうち、同断層帯を含む四つの活断層で地震発生確率が高まったと公表した。地殻変動により、地震を起こしやすい力が働いているという。

 立川断層帯は長さ約33キロで、予想される地震の規模はM7.4。東京都国立市、立川市などで震度6強以上、23区西部でも震度6弱が想定され、都内を中心に6300人の犠牲者が出るという国の推計もある。震災前の予想では、30年以内に発生する確率が0.5~2%で、主要活断層の中ではやや高い。今回それが何%上がったかは算出できていない。地震調査委員会委員長の阿部勝征・東京大名誉教授は「階段に例えれば、一段上がったのは間違いない。ただ、何段上がると地震の階に行くのかが分からない」と話す。

 一方、地震予知連絡会会長の島崎邦彦・東京大名誉教授は「いつ起きても不思議ではない」と語る。立川断層帯の平均活動間隔は1万5000~1万年で、最後に動いた時期は約2万~1万3000年前。「『満期』に近い状態」(島崎さん)だ。

 活断層だけでなく、地下の見えない場所でもリスクは高まっているようだ。東京大地震研究所の石辺岳男特任研究員は、79~03年に首都圏を中心とする3万カ所で起きたM2~4の地震を基に、東日本大震災による周辺の岩盤にかかる力の向きと強さの変化を解析。結果、1万7000カ所に地震が起きやすい力が加わり、起きにくくなった7000カ所を大きく上回った。

 元来首都圏の地下構造は北米、フィリピン海、太平洋の3枚のプレート(岩板)が重なる地震の巣だ。地震調査委が大震災以前から公表しているM7級の直下型地震が、今後30年に起きる確率は70%と十分に高い。しかもこの数字は南関東で過去120年に起きた地震から算出した数字で、立川断層帯は含まれていない。

 島崎さんは警告する。「起きたらとんでもないものが足下にある。今対策をとらずにいつやるのか」
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