2011年11月28日月曜日

開いた“パンドラの箱”終わりなき危機 欧州長期低迷確実に

産経新聞 11月26日(土)19時24分配信

 【ロンドン=木村正人】欧州債務危機をめぐって、英誌エコノミスト最新号は炎を上げて落下する欧州単一通貨ユーロを表紙にあしらい、「これが本当の終わり?」と最高レベルの警戒感を示した。カギを握るメルケル独首相が最終的に欧州中央銀行(ECB)による重債務国の国債買い切りやユーロ共同債の発行を決断、ユーロ崩壊をぎりぎりで回避できたとしても、欧州が景気後退の長いトンネルに入るのは確実になってきた。

 イタリアの3年国債利回りが8・13%まで高騰するなど、25日の欧州債券市場は売り一色になった。重債務国の国債を抱える金融機関が「パニック売り」(市場関係者)に走ったためだ。ECBが買い支えても売り圧力は一向に収まらない。

 エコノミスト誌は、メルケル首相が小・中学生時代のプール授業で飛び込み板の上で尻込みし、終業ベルが鳴ったとき、ようやく飛び込んだ逸話を紹介。同首相にECBによる国債買い切りやユーロ共同債の発行を決断するよう促した。

 ドイツが及び腰なのは、第一次大戦の戦費調達のため政府債務を膨らませ、敗戦と賠償金支払いで1920年代に超インフレを経験したトラウマがあるからだ。債務拡大とインフレを極度に嫌うドイツは、今回の危機でも重債務国に財政赤字削減を迫るだけで他の対策を怠り、危機をイタリアやスペインに飛び火させてしまった。

 英紙ガーディアン(電子版)などは、ドイツは20年代の超インフレよりも30年代に米国が犯した過ちに学べと警鐘を鳴らす。

 大恐慌によって米国が世界中からドル資本を引き揚げた結果、海外からの借り入れに頼っていたドイツではドル資金が枯渇して銀行閉鎖が相次ぎ、倒産と失業が拡大、ナチスの台頭を招いた。同紙は「今ドイツに必要なのはインフレ警戒ではなく重債務国に資金供給することだ」と指摘する。

 欧州では、自己資本が不足した銀行による貸し渋りで経済活動が停滞、各国政府による財政赤字削減も景気の下押し圧力を強める恐れが懸念されている。

 在英ヘッジファンド共同創業者の浅井将雄氏は「イタリアという“パンドラの箱”が開いた。ユーロの支柱のひとつだったイタリアの債務危機で、ユーロ共同債導入の前提も崩れた。メルケル首相がプールに飛び込んでユーロを救ったとしても、欧州の長期的な景気後退入りはもはや避けられない」と話している。
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