2012年2月24日金曜日

【県民の健康調査】日本、人類への貢献(2月1日)

18歳以下の県民の医療費を無料にする要望が、「医療制度全体の根幹に関わるので困難」と国から断られた。目的は県民の特に子供や若い世代の健康被害を長期間検査し、被害があれば直ちに回復することと、それを完ぺきに行うことで若い人たちが福島県内にとどまることにある。国の補助金が目的ではない。やりくりして独自の制度を貫徹したらいい。
 ことは福島県の盛衰に決定的に関わる。しつこい追及が大事だ。医療制度全体の根幹に関わるからやれないというのは解せない話だ。これほどの天災と人災の混在した大被害は人類の歴史に関わる一大事だ。その被害回復と回復過程の記録という歴史的情報を人類全体が共有することは、日本の医療制度の根幹そのものだ。
 今回つくづく人々が感じたことは、放射線による健康被害がどれほど浴びるとどんなものなのか、実は全然分かってないという事実だ。国や国際原子力機関(IAEA)なる組織も、学会も、個別の学者も、各種研究機関も、医者も、電力会社も、誰も彼も結局は、それぞれ説はあっても、確定的に人々を納得させる根拠ある説明はできていない。根拠になる正確な統計や調査がないからだ。
 結局いまだに各人どれを信じるかであって、確かな根拠はないに等しい。実感的にまあ大丈夫かと自らを納得させているだけだ。
 だから、いずれどうせまた世界のどこかで起こるであろう放射能被害に備えて、健康被害の有無を含めた情報を蓄積しておくことは、人類への貢献なのだ。それはとりもなおさず日本のあるいは日本人の、人類に対する医療的な社会倫理的な責任で、つまり医療制度全体のまさに根幹だ。
 それを原発事故と直接関わりのない病気やけがまで無料にするのはおかしいといったレベルの実にちまちました反論や、医療機関や医師の不足につながる懸念があるといった自己防衛と被害妄想で反対する視野の狭い歴史観のない連中にあきれ返る。差別の問題もそうして事実をうやむやにするところに根っこがある。
 日本の発展は世界の人類への貢献であり、そのための福島県からの電力供給は自分のためにやってきたことではない。公共のためだ。それが大震災をきっかけに今あだとなり、とんでもないことになっている。責任追及とは別に、日常はそのとんでもないところから再出発しているのだ。
 大迷惑を被った県民がどう立ち直り、若い人たちが成長し、生活を築き子孫を育んでいくか、その過程を全面的に支え情報を活用していくことは必須だろう。いわれなき差別や風評的排除は、事実が実はわからないことが全て原因になっている。だから医療的社会文明的検証の積み重ねが必要だ。もしそれがあれば、福島県民もいくらかでもより安心するか、あるいは根拠ある心配と対処ができる。
(前毎日新聞社主筆、福島市出身)
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