2013年1月31日木曜日


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【社会】

汚染水、海へ放出検討 東電

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 東京電力が、福島第一原発の高濃度汚染水を処理した大量の水を海洋放出することを検討し始めた。敷地内に水をためるタンクの増設に限界がみえてきたためだ。ほとんどの種類の放射性物質を法定濃度未満になるまで除去するというが、地元漁協は強く反発している。 (小野沢健太)
 「とんでもない話だ。たとえ、どれほど念入りに処理したとしても放出は一切認められない」。福島県漁業協同組合連合会の中田研二参事(58)は憤る。
 茨城県の茨城沿海地区漁業協同組合連合会の吉田彰宏専務も「出荷規制がかかった魚がまだ二十種類もある。今も被害が続いているのに放出という話が出てくること自体、いったい何を考えているのか。現場の実情をあまりに知らなすぎる」と怒りを隠せない。また、同県北茨城市の大津漁協に所属する漁師の男性(60)は「少し風評被害が落ち着いてきたのに、汚染水を流されたら、また『茨城の魚は食べられない』となる。苦しみを分かっていない」と訴える。
 福島第一原発では二〇一一年四月、毎時一〇〇〇ミリシーベルトを超える極めて高濃度の汚染水が海に漏れた。その後、高濃度汚染水の移送先確保のため、比較的に低濃度の汚染水を意図的に放出。魚類から当時の暫定規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)を超えるセシウムが検出され、漁業者は操業自粛に追い込まれた。
 現在は放出を避けるため、タンクに貯水。千基超のタンクに約二十二万トンの処理水がたまり、汚染水処理に伴う廃棄物やがれきも管理している。注水した水は建屋地下に流れ込む地下水と混じって、汚染水は一日四百トンずつ増加。一部は処理して冷却に再利用できるが、大半はタンクにためるしかない。
 一三年度、敷地南側の駐車場など十万平方メートルをタンク造成地に充て、タンク容量を計七十万トンまで増やす計画。それでも、たった二年半で使い果たす見込みだ。北側の森は地盤が軟弱でタンクの長期保管に不安が残る。
 東電側が海洋放出に言及したのは、福島第一の廃炉計画を審議する二十四日の原子力規制委員会の検討会。担当者は「最終的には関係者の合意を得ながら、そういった活動(海洋放出)ができれば、敷地に一定の余裕ができる」と述べた。
 東電が期待するのがセシウム以外の多くの放射性物質も除去できる新しい処理装置。実験では一部の物質を除けば、法定濃度をクリアできる水準まで浄化できたという。
 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は記者会見で「現段階で放出は具体的に考えてはいない」と釈明したが、いずれ処理水が貯蔵しきれなくなるのは明白。その前に、地元も納得できる解決策を打ち出す必要がありそうだ。
 


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