2014年7月10日木曜日

性表現と表現の自由・営利的表現と表現の自由

性表現と表現の自由・営利的表現と表現の自由

2014-06-26 23:00:00 | メディア・リテラシー
1 性表現

(1)わいせつ表現


【1】チャタレイ事件 最判昭和32年3月13日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115952504631.pdf

①わいせつ文書の定義 3要件

 1)徒に性欲を興奮又は刺戟せしめ

 2)普通人の正常な性向羞恥心を害し

 3)善良な性的道義観念に反するもの


②わいせつ文書の規制根拠

要するに
人間に関する限り、性行為の非公然性は、人間性に由来するところの羞恥感情の当
然の発露である。かような羞恥感情は尊重されなければならず、従つてこれを偽善
として排斥することは人間性に反する。なお羞恥感情の存在が理性と相俟つて制御
の困難な人間の性生活を放恣に陥らないように制限し、どのような未開社会におい
ても存在するところの、性に関する道徳と秩序の維持に貢献しているのである。
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 ところが猥褻文書は性欲を興奮、刺戟し、人間をしてその動物的存在の面を明瞭
に意識させるから、羞恥の感情をいだかしめる。そしてそれは人間の性に関する良
心を麻痺させ、理性による制限を度外視し、奔放、無制限に振舞い、性道徳、性秩
序を無視することを誘発する危険を包蔵している。もちろん法はすべての道徳や善
良の風俗を維持する任務を負わされているものではない。かような任務は教育や宗
教の分野に属し、法は単に社会秩序の維持に関し重要な意義をもつ道徳すなわち「
最少限度の道徳」だけを自己の中に取り入れ、それが実現を企図するのである。刑
法各本条が犯罪として掲げているところのものは要するにかような最少限度の道徳
に違反した行為だと認められる種類のものである。性道徳に関しても法はその最少
限度を維持することを任務とする。そして刑法一七五条が猥褻文書の頒布販売を犯
罪として禁止しているのも、かような趣旨に出ているのである。
 

③判断基準

これは猥褻文書であるかどうか
の判断の場合のみではなく、これを以て裁判所が社会通念の何たるかを判断する権
限をもつことを否定し得ないのである。従つて本著作が猥褻文書にあたるかどうか
の判断が一部の国民の見解と一致しないことがあつても止むを得ないところである。
この場合に裁判官が良識に従い社会通念が何であるかを決定しなければならぬこと
は、すべての法解釈の場合と異るところがない


④芸術性とわいせつ性との関係

本書が全体として芸術的、思想的作品であり、その故に英文学界において相当の
高い評価を受けていることは上述のごとくである。本書の芸術性はその全部につい
てばかりでなく、検察官が指摘した一二箇所に及ぶ性的描写の部分についても認め
得られないではない。しかし芸術性と猥褻性とは別異の次元に属する概念であり、
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両立し得ないものではない。


⑤刑法175条と憲法21条の関係

この原則を出版その他表現の自由に適用すれば、この
種の自由は極めて重要なものではあるが、しかしやはり公共の福祉によつて制限さ
れるものと認めなければならない。そして性的秩序を守り、最少限度の性道徳を維
持することが公共の福祉の内容をなすことについて疑問の余地がないのであるから、
本件訳書を猥褻文書と認めその出版を公共の福祉に違反するものとなした原判決は
正当であり、論旨は理由がない。


【2】悪徳の栄え事件 最判昭和44年10月15日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115651689554.pdf

1)芸術的・思想的価値とわいせつ性との関係

〇多数意見:チャタレイ事件をうけつぐ

芸術的・思想的価値のある文書でも、猥褻
の文書として処罰の対象とされることになり、間接的にではあるが芸術や思想の発
展が抑制されることになるので、猥褻性の有無の判断にあたつては、慎重な配慮が
なされなければならないことはいうまでもないことである。しかし、刑法は、その
一七五条に規定された頒布、販売、公然陳列および販売の目的をもつてする所持の
行為を処罰するだけであるから、ある文書について猥褻性が認められたからといつ
て、ただちに、それが社会から抹殺され、無意味に帰するということはない。



〇田中反対意見:相対的わいせつ概念

1)当該文書を全体として考察し、わいせつ性の強弱、文書の受け手の違い(一般国民か専門家か)を問題とすること

2)文書の芸術性・思想性との関連

3)作者の姿勢・態度や宣伝・広告等の方法との関係において相対的に評価・判断すること

の必要性を力説


【3】四畳半襖の下張事件 最判昭和55年11月28日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115919939334.pdf

〇わいせつ性の判断基準:わいせつ

文書のわいせつ性の判断にあたつては、

①当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、

②右描写叙述の文書全体に占める比重、

③文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、

④文書の構成や展開、

⑤さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、

⑥これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否か


などの諸点を検
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討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照
らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞
恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(前掲最高裁昭和三二年三月一三
日大法廷判決(チャタレイ事件)参照)といえるか否かを決すべきである。



【4】 ビニール本事件  最判昭和58年3月8日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115422009761.pdf

〇多数意見:四畳半襖の下張事件 最判昭和55年11月28日をあてはめる

本件各写真誌は、絡み合う男女の裸体写真を、その性器及び周辺部分を黒
く塗りつぶして修正のうえ印刷・掲載したものであつて、いわゆるハード・コア・
ポルノということはできないが、修正の範囲が狭くかつ不十分で現実の性交等の状
況を詳細、露骨かつ具体的に伝える写真を随所に多数含み、しかも、物語性や芸術
性・思想性など性的刺激を緩和させる要素は全く見当らず、全体として、もつぱら
見る者の好色的興味にうつたえるものであると認められるから(最高裁昭和五四年
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(あ)第九九八号同五五年一一月二八日第二小法廷判決・刑集三四巻六号四三三頁
参照)、これを刑法一七五条にいう「猥褻ノ図画」にあたると認めた原判断は、正
当である。



〇伊藤補足意見:
1)ハードコアと準ハードコアを区別

ハードコア:
普通人が直接にその文書図画に接して常識的に判断すれば足りると
も考えられるが、あえて定義をするとすれば、性器または性交を具体的に露骨かつ
詳細な方法で描写叙述し、その文書図画を全体としてみたときにその支配的効果が
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もつぱら受け手の好色的興味に感覚的官能的に訴えるものであつて、その時代の社
会通念によつていやらしいと評価されるもの

準ハードコア:
性器または性交の直接の具体的描写では
ないが、その描写から容易に性器や性交を連想させ、その支配的効果がもつぱら又
は主として好色的興味をそそるものであつて、社会通念に照らして、ハード・コア・
ポルノに準ずるいやらしさをもつ文書図画


2)チャタレイ事件の裁判所の態度に否定的

その第二点は、「猥褻性」(とく
に、当該性表現の「いやらしさ」)の判断の前提となる
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 社会通念の把え方の問題である。ここにいう社会通念は、その社会における広い
意味での文化的な歴史や伝統を背景にして育てられた構成員の意識や感情に基礎を
おくものであつて、必ずしも普遍的なものでないから、外国における実情ではなく、
わが国の社会の実態に即して考えなければならない。しかし、その場合も、それを
固定的に把えないことが必要であると思われる。裁判所が硬直した社会通念をたて
にとり、抽象的な性行為非公然の原則にもとづいて社会を道徳的頽廃から救うとい
う態度をとることは適当でなく
、むしろ社会の実態が流動的であることを認め、普
通人がこのような性表現に接してことさら刺激をうけなくなる馴れの現象や、通常
人においてそのような表現が社会に広く提供されている事実を(積極的であるにせ
よ消極的であるにせよ)うけいれている状況、さらには取締り当局がこのような社
会の状況に応じて準ハード・コア・ポルノの流通を放任している事情などを考慮す
ることが求められよう。このような社会の現実を直視することなしには、刑法一七
五条と憲法二一条との妥当な調和を図ることは不可能であると考える。


以上


(2)青少年保護育成条例

【1】岐阜県青少年保護育成条例事件 平成元年9月19日 
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115519744709.pdf

〇多数意見の規制根拠:青少年に対する関係において、憲法21条1項に反しない

本条例六条二項による指定方式
も必要性があり、かつ、合理的であるというべきである。そうすると、有害図書の
自動販売機への収納の禁止は、青少年に対する関係において、憲法二一条一項に違
反しないことはもとより、成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分制
約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するた
めの規制に伴う必要やむをえない制約であるから、憲法二一条一項に違反するもの
ではない。


〇伊藤正己補足意見

日本国憲法のもとでは、これと同日に論ずることはで
きないから、法令をもってする青少年保護のための表現の自由、知る自由の制約を
直ちに合憲的な規制として承認することはできないが、現代における社会の共通の
認識からみて、青少年保護のために有害図書に接する青少年の自由を制限すること
は、右にみた相当の蓋然性の要件をみたすものといってよいであろう。問題は、本
件条例の採用する手段方法が憲法上許される必要な限度をこえるかどうかである。
これについて以下の点が問題となろう。
 

【2】福岡県青少年健全育成条例事件 平成21年3月9日
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090309142234.pdf

〇被告の主張
1)遠隔操作で対人対応するので自動販売機にはあたらない
 
 裁判所→自動販売機に当たる

2)本件まで自動販売機として罰することは憲法21条に違反する

 裁判所→罰することは適用違憲ではない


2 営利的言論(芦部憲法学Ⅲ 314~325頁)

【1】あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師違反被告事件 最判昭和36年2月15日


以上
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