2011年5月4日水曜日

<福島第1原発>放射性物質の拡散状況シミュレーション公開

(毎日新聞 - 05月03日 21:33)

 政府は3日、東京電力福島第1原発の事故で、公開していなかった放射性物質の拡散状況を予測した約5000枚のシミュレーション(試算)結果についてホームページ上で公開を始めた。試算結果は、実際に各地で計測された累積放射線量の分布状況とほぼ重なる傾向にあり、政府の情報公開の遅れに対して改めて批判が出そうだ。

 試算は、文部科学省が開発した「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)で実施した。公開されたのは、ヨウ素など1ベクレルの放射性物質が原発から放出され続けたと仮定した場合、風向きなどを考慮してどう放射性物質が拡散するか予測した結果。例えば、1号機原子炉建屋で水素爆発が発生した直後の3月12日午後4時時点の試算結果では、北北西方向に放射性物質が広がる様子が分かる。また、2号機の圧力抑制プール付近で爆発発生後の同15日午後の試算結果では北西方向に放射性物質が拡散する状況がうかがえる。

 SPEEDIの情報公開を巡っては、細野豪志首相補佐官が先月25日の記者会見で全て公開すると発言。だが1日夜になって約5000枚もの未公表の試算結果があることが判明し、細野氏は2日の会見で「(文科省などが公開しなかったのは)市民に不安を与え、パニックが起きるのを恐れたため」と謝罪した。

 NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「SPEEDIは事故直後の防災対策に役立てられなかった時点で大きな問題がある。さらに放射性物質の拡散も市民にとっては高い関心事で、試算といえども隠さずに、説明を尽くしながらもっと早く出すべきだった」と話す。【河内敏康】