2011年7月15日金曜日

首相孤立…脱原発方針、閣僚が火消しに奔走

(読売新聞 - 07月15日 01:41)

 菅首相が表明した将来的な「脱原発」方針は14日、枝野官房長官らが相次いで軌道修正を図るなど、閣僚らが“火消し”に走る異例の事態に発展した。

 日本のエネルギー戦略をめぐる重大な政策転換について、閣内での事前調整がないまま首相が打ち出したことへの反発が大きいとみられるが、首相がもはや閣内すら掌握していないことが明白になった。

 首相が「将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していく」と発表した13日の「脱原発」方針について、枝野長官は14日の記者会見で、「遠い将来の希望という首相の思いを語った」と述べ、内閣の政策目標ではなく、首相の個人的な「思い」に過ぎないとの認識を示した。

 玄葉国家戦略相(民主党政調会長)も14日の党政調の会合で、「政府内でも、原子力の依存度を徐々に減らしていくことはほぼコンセンサス(意見の一致)がある。ただ、ゼロにするかどうかの大きな議論は、もう1回やらざるを得ない」と述べ、政府の方針となっていないことを強調した。

 海江田経済産業相も14日の衆院本会議で、長期的なエネルギー政策の見直しについて、「原子力発電の位置付けを含め、今後のエネルギー政策のあり方は予断なく議論を行う」と述べた。首相の脱原発の方針に縛られず、見直しを進める考えを示唆した形だ。

 閣僚らが首相方針に冷淡なのは、事前調整抜きだった経緯に加え、内容的にも、日本のエネルギー戦略や経済情勢に十分目配りをしたとは到底言い難い、稚拙な発表だったためだ。