2013年6月21日金曜日

千葉ニュータウン:「奇跡の原っぱ」消滅危機 キツネ/トンボ…絶滅危惧27種 40年ぶり宅地造成で

毎日新聞 2013年06月16日 東京朝刊

 千葉県印西(いんざい)市の千葉ニュータウン開発予定地内の草地に貴重な昆虫やホンドギツネなど絶滅の恐れがある動植物が多数生息し、現状を保存すべきだとの声が上がっている。里山を崩す1970年代の大規模な造成で生まれた平たんな土地が草原化。本格的な宅地造成もなく約40年間放置され、いつしか希少種の聖域となり、「奇跡の原っぱ」と呼ばれる。ところが昨年末、宅地造成が急に動きだし、消滅の瀬戸際にある。【井上英介】

 原っぱは、UR(都市再生機構)と県による同ニュータウン事業で最後に残った開発予定地約140ヘクタールの一角を占め、面積は東京ドーム11個分の約50ヘクタール。北総線印西牧の原駅の北に広がっている。開発初期に山を崩し湿地を埋めて平らにした。

 原っぱでは、今ではほとんど見られなくなったホンドギツネの営巣が確認され、エサのノウサギも豊富。トンボなども含め環境省指定の絶滅危惧種27種、千葉県指定109種を含む多様な生き物の生態系が成り立っている。現地に詳しい日本自然保護協会の高川晋一農学博士は「駅から徒歩圏内に国立公園級の生態系があるのは、驚嘆に値する」と話す。

 印西の原っぱは県有地で、URが定期的に草刈りをして管理する。ニュータウン開発事業は今年度末で終了期限を迎えるが、今の全体の人口は約9万人で、目標の約14万人に届かない。不況や人口減で宅地需要が見込めず、原っぱは本格造成を免れてきた。高川さんは「県有地で人が入らず、草刈りされているため森にもならないなど人為的要素が重なって成立した」とみる。

 だが昨年11月、URは原っぱの南側の樹林を大量伐採し、宅地造成を開始。地元で「売れるあてがまったくないのに、なぜ造成をごり押しするのか」と批判が上がり、原っぱや近くを流れる川の保全活動に取り組む市民グループ「亀成(かめなり)川を愛する会」が署名活動を始めた。政府がほぼ全額出資するURは造成開始の直前に会計検査院の調査を受け、大量の未利用地を抱える状況を改善するよう求められていた。

 今月13日には、全国の研究者で組織する日本生態学会(会員約4000人)が、造成の一時中断や原っぱの保全などを県とURに申し入れた。学会メンバーの西広淳(じゅん)・東邦大理学部准教授も「関東地方で保全すべき草地を1カ所挙げるとすれば、この地域だ」として、貴重な自然と共存するよう土地利用の再検討を求める。

 一方、UR千葉ニュータウン事業本部は取材に「事業終了期限の来年3月までに造成を終えたい」とし、申し入れに応じず造成を急ぐ構えだ。

http://mainichi.jp/feature/news/20130616ddm041040047000c.html

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